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キミと見たライブの景色![]() 代表作品 主人公「ゆうだい」の視点で描かれた物語 | |
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キミが見ていたライブの景色![]() スピンオフ ヒロイン「あき」の視点で描かれた物語 | |
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作品更新履歴
あらすじ
CDをたくさん買いたくて、父親からの塾通いの提案を受け入れる。
夜ご飯代の1000円を節約すれば好きに使っていいとの提案に喜んで入塾試験を受ける。
圧倒的な天才のゆうちゃんは有名進学塾の試験も容易かった。
そして・・・
衝撃的な出会い
ぶつかって舌打ちしてきた女の子が僕の目当てのCDを視聴していたのだ。
第一印象最悪の女の子の横に行って同じCDを視聴する程の勇気は僕にはない。
ヘッドホンをつけた小さな頭がフリフリと動いてノリノリで視聴してるのだ。
同年代の子がこのバンドのCDをノリノリで聴いているのを見て僕は少し話しをしたい気持ちもあったが第一印象最悪の子である。
さっきの舌打ちが脳裏に蘇るのだ。
つい数分前の出来事がなければ良い友達になれたかもしれないのに…
残念な気持ちに押し潰されそうになりながら諦めて帰ろうともしたが、気まぐれで聴いただけですぐにどこかに移動するかもしれないと淡い期待を胸に少し様子を見る事にした。
15分くらい影から見守る(結構ヤバい絵面である)と女の子はその新作CDの梱包を破り、中身のCDを取り出し自分のポータプルCDプレイヤーに入れた。
『万引き』である。
衝撃的な出来事をダイレクトに目撃してしまったのだ。
人生の全てを「良い子」で貫いてきた僕には衝撃が強すぎて頭の中が停止する。
どうしたら良いんだろう?
注意するべきなのか?
それとも無視するべきなのか?
店員にこっそり伝えると言う手段もあるがそれをするとこの子の顔を今後まともに見れなくなりそうだと考えた。
やはりちゃんと注意するべきなのかもしれない。
今後同じ塾に通うかもしれない人なのだ。
無視したりすると今後ずっとこの子を警戒して塾に通わないといけなくなる可能性もある。
正義ぶるわけではないけど、自分の今後のために僕は注意する事を選んだ。
舌打ちの仕返しをしたかった気持ちが無かった訳ではないがそんな卑怯な理由ではない。
このまま何もなく帰らせてはいけない。
声をかける決心をした頃にはすでに女の子は店の外に出ていた。
急いで追いかけて後ろから声をかけた。
走って追いかけて行ったので少し声が裏返ってしまっている。
『ねぇ。待って!!』
緊張しながら必死に声をかける僕に対して
『ん?なに?誰なの?』
冷静に返される。
とても万引きした直後の女の子の心境とは思えない。
もしかしたら常習なのかな?
余計に注意しないといけないと思った。
万引きした直後に声をかけられて怖くないのかな?
『塾が終わってからCDショップでずっと見てたんだけどね…』
万引きというワードが怖くて出せなかったのでさりげなく見てしまった事を知らせる。
『えっ…キモっ…何?あきの事が好きなの??ってかキミは誰?』
えっ??えっ?
なんか僕が責められてる?
ってか好きとか言ってないんだけど。
とか思いながらパニックになりそうになる。
よくよく考えると僕の言葉を考えたらこの子が言う事の方が正しいのだ。
確かに15分ほどずっと影から見てたけど……
それは「怖いから」であって「好きだから」ではないのだ。
突然突き飛ばして舌打ちして走り去ったのは誰だよ。
そして突き飛ばした相手を覚えてないのは誰なんだよっ…
なんてハッキリと言える訳もなくオドオドしているとニヤリと笑いながら僕に向かって
『で、何なの?告白でもしてくれるの?笑』
おちょくっているかのような口調でケラケラと笑う彼女が少し憎くて
『万引き、よくないよ。』
ハッキリ言ってやった。
どうだ!!僕は見てしまったんだぞ!と少し自信を取り戻しながら彼女を見るが、
『なんでキミはあきの事をずっと見てたの?』
答えになっていない。
この子の名前が「あき」なのはよくわかった。
だが思考回路はショート寸前なのだ。
話の主導権を完全に奪われたのでひとまず先に質問に答える。
承認欲求を満足させて話を聞く体制を作ろうとの魂胆だ。
そのCDのバンドが非常に好きなバンドな事、発売日に視聴したくて楽しみにしていた事、さっき塾で突き飛ばされて少し怖かった事。
正直に全て話してひとまず満足してもらおうとした。
『なんだ!!CD聴きたかったのか。じゃあ聴かせてあげるから座ろう♪』
自販機コーナーのベンチに手を引っ張って連れて行かれてイヤホンを片方渡される。
片方ずつイヤホンを付けて一緒にCDを聴くことになった。
選曲の主導権はもちろん持ち主の彼女にあった。
彼女はCDを再生しながら曲ごとに好きな部分とこのバンドの良いところなどを次々と言葉にしてこのバンドが好きな事を伝えてくる。
僕も同じようにこの大好きなバンドについて熱く語る。
めちゃくちゃ話が弾み、熱く語り合う。
好きな曲やかっこいいフレーズ、いつからこのバンドが好きなのか、他にどんなバンドの曲を聴いているのかなどなど、話は尽きる事なく永遠に続く。
夢中で30分くらい音楽を聴きながら話をした所で突然曲を停止される。
『キミも一緒に楽しんだから共犯だね。』
共犯という言葉を初めて聞いた小学生だが、言葉の響きや前後の文脈によりどういう意味なのかはすぐに理解してしまう。
『ちょっと待って!!それは違う!』
否定しようと必死な僕に対し
『うるさい!盗んだ物ってわかってて一緒に楽しんだんだから。わかるよね?』
反論の言葉が出てこない。
『おねーさんがジュースを奢ってあげるからもうコノ話は終わりね。』
買収の提案が浮上する。
早速彼女は自販機にお金を入れてランプが光った自販機を指さす。
背徳感に押し潰されそうになりながら僕はオレンジジュースのボタンを押した。
『オレンジか!まだまだ子供だねっ』
ニヤリとしながら僕の顔を覗き込む彼女は可愛くて悔しかった。
『おねーさんとか言って調子乗ってるけど同い年でしょ?』
悔しいから少し意地悪に言ってみる。
『えっ?キミ次5年になるの?入塾テスト受けに来たんだったら4年になるんじゃないの?』
『あきは次5年になる、この塾は2年目で継続テストを受けに来たんだよ?』
どうやらこの少女は見た目は同い年か年下なのに実は1つ上らしい。
『次5年生になる進学コースの「あきちゃん」だよ』
『呼び方は当然「あきちゃん」って呼ぶようにね!
キミが受かってたら同じ曜日になるんだし仲良くしてあげるね。』
めちゃくちゃ上から目線だ。
一方的な「あきちゃん」の勢いに呑まれてしまう。
『僕は「ゆうだい」です。よろしくお願いします。』
つまらない返答しか出来なかった。
『それじゃあキミは「ゆうちゃん」って呼ぶね。
進学コース受かってたら塾の初日、とりあえず5年の教室に来てあきを探すように!』
一方的に次に会う約束をさせられて帰宅した。
あとがき
圧倒的なあきちゃんのペースでインパクトの強い出会い。
趣味や思考の近い天才少年少女はこの後、お互いの運命を左右するかけがえのない関係になっていく。
物語の始まりが動き始めました。
初作で少し心理描写の表現力に欠けますがご理解ください。
同時にスピンオフ作品
「キミが見ていたライブの景色」を見ていただくとあきちゃんの心境も読めるので違った楽しみ方が出来るかと思います。
そちらも併せてよろしくお願いしますm(*_ _)m